英文をノートにひたすら書き写す、筆写という学習法

IT全盛の時代、語学学習において、地道に「筆写する」という行為自体が、軽んじられているように思えてなりません。 しかし、筆写は英語力UPに効果的です。 (注意:会話能力に問題がなく、書く力を鍛えたい場合です。初学者や、会話を高めたい方は、やはり音声のインプットが最初にあるべき) 私の2つの経験をお話しします。 一つ目は、私がはじめてイギリスの家庭にホームステイした時のことです。 1人の香港人学生が先に滞在していました。 彼はEast Anglia大学への進学をめざす留学生。 大学進学に必要なIELTSを既にとっていたので、あと数ヶ月したら授業がはじまる、という状況でした。 私が語学学校の授業から家に戻ると、彼はいつもきまってテレビを見てケラケラと笑いながら、英英辞書を開いて何やら書き写していました。 毎日数時間、彼はこの作業を続けているようでしたので、さすがに興味が出てきました。 「何してるの?」と聞くと、 「辞書を書き写しているんだ」。 え? 何の為にやっているのかと聞いてみると、 「ライティングが苦手だから、辞書を頭から毎日書き写しているんだ。即効性は無いけど、書く力はつくよ」 というのです。 彼は、大学進学までの間、ただひたすらに英英辞書をノートに書き写していました。 手が痛くなるぐらい、毎日毎日書き続けていました。 この時は、「変わった勉強法だなあ」と思って、気にも留めなかったのですが、彼の話す英語力を見て、これだけ話せる人が取り組むのだからから、きっと強力な学習法だと思うようになりました。 2つ目は、私自身がイギリスの大学院に進学し、ファイナンスの試験に苦労したときのこと。 MBAでは短期間でグループワークやアサインメント(論文)を仕上げなければなりません。 英語力のない私は朝7時には図書館にこもり、授業後は22時過ぎまで図書館で復習してから帰宅する日々。 特に問われるのがライティング力です。 アサインメントは時間をかければ何とかエッセーが書けました。しかし試験で論述問題となると、付け焼刃のライティング力では太刀打ちできません。 具体的には、ファイナンスの試験は2時間で、A3の紙両面に、課題文に対してぎっしり論述することが求められました。頭の中に英語のインプットが入ってなければ、紙を埋めることはできません。 こまった私は、藁をもすがる思いで、この筆記試験対策に、ホームステイ先の彼と同じようにテキストを繰り返し繰り返し筆写したのです。 大量の答案を書かなければならなかったため、苦肉の策で、教科書の重要事項や、作成した予想解答文章を、音読したあとに40、50回筆写をくりかえしました。手が痛い、口も痛い。 驚くことに、結果としてうまく試験を乗り切れました。自分が考えるスピード以上に、筆がすらすらと答案を書いてくれる感覚すらありました。 想定していない問題が出題された時も、臨機応変に英文を組み立て、書くことができたのです。試験結果もよい評価でした。 特に大量のレポートに苦しんだ経験から、この「筆写」という学習法は、自分のライティング力を高めるうえで効果的と言えます。 では、なぜ「英英辞書の筆写」が、英語力、特に書く力のアップにつながるのでしょうか。 まず第一に、筆写を繰り返すことで、文法的に正しい文章に大量に触れる事ができます。 しかもただ読むのではなく、書き写すという行為を通じ、知らず知らずのうちにセンテンスやフレーズを覚えてしまうのです。 英和辞書、では無い点がミソです。留学生用の英英辞書は、全ての英単語が易しい英語で説明されています。 模範例文を、これでもかこれでもかと書き写すうちに、英語の感覚が手になじんでいくのです。 二つ目に、指先が英語を記憶し、思考のスピードを越えて、英語を早く書くことが出来るようになるためです。 筆写なんて効果ない、と思われる方。その効果は、歴史の事実が証明しています。 福沢諭吉の『福翁自伝』を読んだ際、彼が適塾での蘭学修行時、日本に数冊しかない辞書を塾生内で奪い合いながら、丸ごと筆写して語学を身につけた、というエピソードに出会いました。 適塾では、読解授業は、今で言う訳読式で行われていました。筆写についての授業の記載は有りませんが、貧しかった塾生はよく、当時高価だった辞書や原書の筆写をして、生活の足しにしていたと書かれています。 おおよそ科学的な学習法とは言えませんが、全神経を集中させ、一字一句を自分の手で筆写することで、知らず知らずのうちに言語の型を体得したのでしょう。これも筆写です。 語学教材が辞書以外に存在しなかった幕末という時代背景を考えると、辞書の「丸呑み」のような学習法は、強烈な効果があったと思われます。 音読できる文を筆写することを、おすすめします。 3つ目は、英語のスペルを覚えるのに効果的だからです。 英語の初学者から中級者は単語のスペルを覚えるのに苦しむ人が多いです。これは英語のスペルと発音が一致していないことが原因で、話せるのに正しく書けないという現象がよく見られます。 その点、英文を音読しながら書く学習法は、英語の音とスペルの一致を促します。 つまり筆写は、英文の発音をできて意味を理解してから行うべきなのです。 いわばこういった筆写は、英語音声に十分になれていて会話に不自由しない学生が、書く力を伸ばしたい場合に有効であるとおもいます。 また忙しい社会人には時間がかかり過ぎ、不向きな学習法とはいえますが、 「ライティング力を鍛える為の良質のインプットを得る」と割り切って、毎日こつこつと英英辞書を筆写するのは面白いかもしれません。 Longman Dictionary of Contemporary English 6thでは、これまでの頻出3000語に加え、Longman …

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Paraphrasing パラフレージングは、アカデミックライティングの基本

イギリスの大学院準備コース、つまりAcademic Englishコースの授業で叩き込まれるのが、Paraphrasingです。 大学院は学問をするところであり、学問をするにはルールを守らねばならない。第一が、Plagiarism(窃ぴょう)を絶対にしないことです。 つまり、出典を明示せず「コピペ」することは、他人の業績を盗むことであり、やってはなりませぬと、大学院準備コースで、繰り返し繰り返し刷り込まれます。 2014年にSTAP細胞を発見したと話題になった研究者の一件は、日本に衝撃をあたえました。 とくに彼女の早稲田大学での博士論文の一部が、20ページにわたってあるサイトのコピペであったことが大きく報道されましたが、これはイギリスの大学院では、完全にアウトです。アカデミックなルールを破ったとして、退学処分となります。 つまり、今回の一件を欧米の人が聞いたら、「それはアカデミックのルール違反。学部生レベルでもありえない」という反応なのです。 日本を含むアジアの大学は、一般的にこういったPlagiarismの意識が低いといわれていますが、今回それを補完する事実が出てしまったといえます。 さて、Plagiarismを避けるためにはどうしたらよいか。その方法が、Paraphrasingです。 目的は、エッセーなどの文章を引用する際、Plagiarism(窃ぴょう)を避けるために文章の構成を変える手法です。 方法としては、主に3つあります。 1、synonimous 同意語を入れ替える 2、word classes 単語の格変化を利用する anxiety を anxious 3、word order 語順を変化させる 語彙が足りないノンネイティブには、Paraphrasingは難しいライティングスキルです。 出来るだけ自分の語彙を増やし、文法知識も鍛える事で、パラフレージングがうまく出来るようになります。

量が質に転嫁する -大量の英文を書くことで、英語ライティング力を鍛える方法

どうやってライティング力を強化したらいいか、私も大学院進学前に多いに悩みました。 MBAに限らず、英国の大学院では大量のアサインメント(レポート)が英語で課されます。とにかくライティング力が問われるため、書く力を高めなければならなかったためです。 私の取ったアプローチは、「大量に書くことで、英語ライティング力を高める方法」でした。 きっかけは、University of BathのMBAに進学前、私はSheffieldにある民間の大学院準備コースに通ったときのことです。 そこではアカデミックライティングの基本を徹底的に叩き込まれました。正確に、そして論理的に英語を書く方法をトレーニングしました。 一方で、そこの教師は、次のようなことを推奨していました。 「正確に書くことも大切だが、まずは間違っていてもOKなので、大量に書くことを習慣化しなさい」 たとえば、あるライティング課題が出され、その場で書きなさい、と指示されたとき、まずは自分の考えを表現できることを優先しろというのです。 多少文法的まちがいや、使用語彙がすくなくことには目をつぶり、とにかく大量に英語を書ける状態を目指しなさいということです。 これはあながち見当違いなアドバイスではない、と留学中に気づきました。 不完全でも、自分の考えをその場で表現するという、ある種の英語の瞬発力の必要性は、英語圏に生活するとひしひしと感じます。 ましてや大学院進学となると、完璧な英語を話したり書いたりすることよりも、不完全でもコミュニケーションに十分な量の英語を、スピード感をもってアウトプットする必要がどうしてもあるのです。 そこで、私はWritingの自己学習では、一定時間である程度の量を書けるように訓練することに注力してきました。 もちろん文法的に誤りが多かったり、同じ語彙を繰り返しつかってしまったりと、稚拙な文章ではあります。 しかし、たとえば英語資格試験が求める英語ライティング力、たとえばIELTSが要求する250wordsぐらいを、日記という形式で毎日さっと書く習慣をつけました。まいかい、自分の中にある単語や文法をひねり出し、とにかく言いたいことを素早く書き出します。 日々新聞を読んだりしてボキャブラリーを増やし、また文法問題を解いたりして、語彙と文法力を高めるインプットの仕組みを築いておけば、やがてその知識が自分のWriting内容に反映し、昔自分が書いた文章の間違いに気づけるようになるはずです。 へたくそな文章ではあっても、継続して書き続けること。 そして文法と語彙をすこしずつでも磨き続けること。 すぐに上達しよう、高いスコアを得ようとあまり欲張らず、長期的視点でwritingと向き合うこと。 こんな心がけで、留学中ライティング学習をつづけていました。 大量の英文を書き続け、インプットも継続すれば、やがて稚拙だった英文の質は上がっていきます。質は量に転嫁すると信じられるかたは、ぜひお試しになってはいかがでしょうか。