講座を企画運営するために作った小冊子

先日、全国通訳案内士についての講座をはじめて開催した。 講座では、私の全国通訳案内士試験の受験経験をまとめて説明したり、高校生に行っているような英語学習活動を体験していただいた。 参加者のほとんどが満足、大満足と回答してくれた。情報量が多い、役に立った、モチベーションが上がった、もっと回数を増やしてほしい等々である。 参加者には、私がこつこつ書き溜めていた記事をまとめ、小冊子としてお渡しすると、思いもよらず喜ばれた。熱心に読んでいただき、沢山の質問も頂戴した。「ここの引用文、私も大好きなんですけど、この出典が誤ってますよ!」と誤植を指摘していただくことさえあった。うれしい限りである。 自分で講座を企画・開催すると、多大な労力がかかる。多様な背景を持つ社会人を2日間引きつけることは、容易なことではない。 だが、企画の構成を考え、それを形にすることは、私にも大きなメリットがあった。書き溜めた文章を小冊子にまとめて、わかりやすい構成にして、ひとつの製品のプロトタイプ=原型を作ることができた。 特に英語学習法や、私の留学経験、多読学習などにも関心をいただいた。この小冊子を毎年更新し、受講生のかたのためになるような、よりよいものに作り上げていきたい。

15 通訳案内士の勉強をしてよかったこと3 視点と行動の変化

 全国通訳案内士の勉強をしてよかったことの3つ目は、新しい視点が身につき、行動が変わったことである。身についた新しい視点とは、自分に問いを立てる習慣だ。日々の何気ない日常生活の中で、「これを英語でどのように説明するのだろうか」という問いを、自分に問いかけるようになったのだ。これは普通の日本人の視点だけでなく、日本を訪れる外国人観光客や通訳ガイドの視点でモノを見るようになった、といえる。  日本の生活や文化を、英語でどのように説明すればよいのか、と常に自問自答するということは、いってみれば毎日「英語で日本を再発見」しているようなものである。外国人観光客や、彼らをガイドする通訳案内士の立場から、日本を見てみると、様々な気づきがある。例えば「懐石料理」を目にしたとき、英語でどのように説明するかを考える。懐石料理の定義は何だろう。海外に似たものはあるだろうか。懐石の意味は。歴史的な背景や、おすすめのスポットについても、自然と興味がわいてくる。これは観光客の視点を持つということは、日本を客観視できるようになる、といえる。  「視点」だけでなく、日々の「行動」も変わった。「行動変容」である。大きく変わったのは、家族との休日の過ごし方だ。これまで縁遠かった、博物館や美術館へ行くことが増えたのだ。仏像や国宝展、絵画などの企画展情報を調べて、楽しむようになった。上野の国立博物館では、定期的に有名な企画展を行うので、1年に何度も通っている。  通訳案内士を勉強した後、家族旅行先も幅広くなった。日本の観光地情報を学べば学ぶほど、家族で行きたい、子供に見せたい場所が増えていく。これまで家族旅行といえば、箱根の温泉や、千葉の海水浴ぐらいしか思い浮かばなかった。しかし観光・地理・歴史の知識が増えると、日本の観光資源のすばらしさを再発見できたのだ。多少お金や時間がかかっても、最近では東北や四国などの観光地や文化財を、意識的に見に行く。  「行動変容」は、余暇の過ごし方にとどまらない。幅広い新聞や雑誌、書籍に目を通すようになったのだ。日本のことに興味がわいてくると、「なぜだろう」という疑問や、「知りたい」という欲求も当然わいてくる。そこで、これまで手に取らなかったジャンルの本やニュースへ、アクセスする機会が増えたのだ。例えば、旅行や料理、美術などの本や雑誌を購入し始めた。関心が広がると、知識も増える。知識が増えると、物を見る視点も広がり楽しくなる。その知識が、雪だるまのように大きくなっていく。  試験勉強に取り組んだおかげで、時間管理つまり「タイムマネジメント」の力も身に着けることができた。フルタイムの職業を持つ社会人にとって、勉強時間の捻出は大きな課題である。唯一自由にできる時間は、通勤時間ぐらいなものだ。これまで通勤時間中、ネットサーフィンしたり、ぼ―っとしているだけであった。今回、私は往復3時間の通勤中を勉強時間にあてた。足掛け1年半、通勤時間に勉強を続けると、勉強することが習慣となった。時間を無駄にしている感覚が気持ち悪いのである。こうした時間の有効活用、タイムマネジメントの力も、通訳案内士試験に取り組んで身についた。  このように、通訳案内士試験に取り組み合格した結果、資格取得以上のモノを得ることが出来た。通訳案内士試験を勉強してよかったと、改めて思う。 �L��9� z@�

14 通訳案内士の勉強をしてよかったこと2 英語を話す力がUP

 通訳案内士試験を勉強してよかったことの2つ目は、英語を話す力がUPしたことだ。その理由の一つに、「英語をつぶやく習慣」を身に着けることができた点がある。この試験では、2次試験に対象言語でのプレゼンテーションと応答、そして通訳問題が出題される。これに対応するためには、付け焼刃の対策では合格できない。普段から英語を話す必要がある。そのため日常生活のなかで、できるだけ「英語を話す」モチベーションが得られたのである。とくにこの試験は、英語の正確性よりも流暢性に重点が置かれているので、時間を見つけては、間違いを恐れずに一人で英語をつぶやく習慣が身についた。  語彙力が強化されたことも、英語を話す力が高まったもう一つの理由だ。語彙力が付くと、自分の表現力が豊かになり、英語で伝えられる内容自体が深まる。つまり内容のある英語を話すためには、ある程度の専門用語を使いこなす必要がある。その点、この試験を勉強したことで、日本的事象の語彙が大幅に増えた。実際、職場のネイティブに日本文化を説明するとき、さまざまな日本文化や事象を英語で説明することが容易になった。  英語を話す力がUPした理由の3つ目は、「通訳案内士資格」を学習すると、英語を使用するためのAuthentic(本物の、の意味)な機会を作り出せることだ。どういうことかというと、日本にいながら、英語を使って世界と繋がれる場を手にすることができるのだ。そもそも通訳案内士の資格を取る目的の1つが、「日本で英語を使う必然性を作る」ためであった。大学院留学から帰国し、日本で英語を使う場面が激減したので、英語を使う場に身を置く作戦を考えていた。その点、この全国通訳案内士は、恰好の資格であった。日本で英語を使って観光ガイドが出来る。日本文化を英語で説明する動機付けが高まる。余暇があれば、東京の観光ボランティアに登録して、英語で社会貢献もできるのである。  もう一つは、通訳案内士の勉強をすると、ソーシャルスキルが向上するのだ。いってみれば、英語での「雑談力」が上がるのである。ネイティブと英語で「雑談」することは、思った以上に難しい。単に単語力や流暢性が高まれば、英語でうまくコミュニケーションをとれるわけではない。たとえば、通勤途上で会ったネイティブの同僚と30分英語で話す場面を想像してほしい。共通の趣味があれば話は別であるが、意外に話すネタに困るものだ。  雑談のテーマとして使えるのは、旅行や食事、行事や歴史、スポーツなどであろう。よく言われるのが、「木戸に立てかけせし衣食住」だ。いわば道楽についてである。このテーマを雑談で使えば、たいていは話すネタに困らない。それは外国人相手でも同じである。実は通訳案内士の試験は、このテーマをほぼ網羅しているのだ。だからこの内容を英語で話せる力がつくと、飛躍的に「雑談する力」が身につく。  私の職場にはネイティブの同僚がいる。実際、通訳案内士の勉強をした後、彼らたちとの雑談が、格段に楽にできるようになったのだ。「木戸に立てかけせし衣食住」のような個人の道楽について、英語の語彙や知識が増えたためだ。例えば、季節の日本食を英語で説明したり、特徴や歴史を話題にすると、それだけで盛り上がる。食の単語などは、他の英語試験を勉強しても、なかなか身につかない語彙である。 l