10年1投資

10年前、私は人生の転機を迎えた。 当時勤めていたのは外資系企業。本社部門の縮小に伴い、リストラされる中高年、早期退職で会社を出ていく同期。会社は混乱の極みであった。 私へも本社勤務から奈良県への異動辞令が出た。 東京に勤務しながら、夜間に明治大学の大学院で経営を学ぼうと考えていた私は、困った。 このまま転勤して営業職に戻れば、当面の金銭面は安定するが、将来性のない営業職だけのキャリアでは、10年後はビジネスマンとして陳腐化していることは、容易に想像できた。 当時付き合っていた彼女に後押しされ、以前からやりたかった大学院留学に挑戦することとした。教育への投資である。 成功のあてなどなく、費用も1000万以上かかる。それでも、座して死を待つより、とりあえずやってみることを選んだ。 2年後、英国でMBAを取得。現地の日系企業が現地法人の社長を探していて、オファーをもらった。Swindonという町に住むことになっていたが、妻が日本で職を得た。異国の地でホームシックになっていた妻にとって、英国生活は限界だった。オファーを断り、私も日本で就職した。 10年前の無謀ともいえる挑戦は、私たちに有形無形の資産をもたらした。当時の苦しくも楽しかった思い出は色あせることなく、二人でふと思い出しては懐かしむ。 英国で磨いた英語力のおかげで、私は職を英語教師に転じた。英語に興味はあったが、教師として働くなど、留学前ならあり得ないキャリアだった。 教壇に立ち、教室で英語を教える日々。経験してきたものの濃さが、私に絶対的な自信を与えてくれる。たまに留学中の話や、外資系企業での失敗談などを話すと、つまらなそうにしていた生徒はふっと顔を上げるときがある。 前回の再教育への投資から、10年が経過した。いまは仕事をある程度のパフォーマンスでこなせている。しかし10年後はどうか。経年劣化し、私のスキルは緩やかに低下していくだろう。今以上の仕事を生み出すことは、現状では見込めない。「再投資プログラム」を始動させるときが来たようだ。 10年で1投資。学びなおしの時がきた。今後10年、そしてその先の10年を、別次元の水準でアウトプットする力を身につけるためだ。一番興味のある分野が、研究である。研究の基礎を学び、どのような環境でも仮説を立てて検証分析し、それをアウトプットするスキルがほしい。 このブログの開始は2010年4月。会社の退職を決めたのがその年の6月、7月には籍を入れ、9月には留学した。つまり、10年前の6月に、私は人生の決断を下したのだった。 「やらないで後悔するより、やって後悔したら」と妻はいう。最後はあなたが決めて、という。大学院受験だけは、やってみようと思う。合格したらその先は考えよう。