うまくやろう、は馬鹿野郎

大きな環境の変化を体験し、ストレスをかんじていたのだろうか。下の歯が痛み出し、水も食事もとれない日が2日も続く。夜ものたうち回る。 慌てて歯科に駆け込むと、接触の必要ない高性能体温計で体温を測定される。コロナ感染症の影響は小さな歯科医院にもみられると驚く。歯に異常はなく、歯茎やあご付近の炎症だといわれ、抗生剤をもらう。劇的に改善する。 そういえば同じようなことが、かつてあった。大学時代、中央アジアのある国に1年間留学することを勢いで決めた。大学の派遣留学試験に合格し、50万円の奨学金と、航空代金、大学授業料、寮費が免除。ロシア語授業の特訓も付く。最高の条件であった。 だが周囲の誰しもが、「どこ?」「なんで?」「生きて帰ってこれるの?」と戸惑う。住んでみたかったのだから仕方がない。 その準備していたときのこと。当初の高揚感はうすれ、徐々に不安になっていく。なんで留学するのか、目的もぼんやりしていたので、出国が近づくにつれ不安感が増す。現在より情報もすくなく、ひょっとしたらもう戻ってこられないかも、と悲壮な覚悟だった。 3日前、上の葉が激しく痛む。怖くなり歯医者に駆け込む。もう1年以上、日本の治療はうけられない。そう焦り、慌てて神経を抜いてしまった。留学中は痛みもなかったので、それはそれでよかったかもしれない。だが、今思えば、弱気になっていたのは明らか。留学に失敗したらどうしよう。周囲から笑われる。ロシア語を習得できなければどうしよう。生活になじめなければどうしよう。マイナスに考えれば、すべてマイナスに取れる。痛みは多分にストレス性のものだっだ。 弱気とは、失敗を恐れることである。気迫のない状態である。特に不器用な人間にとって、「ものごとをうまくやろう」「失敗せずに小器用に立ち回ろう」という、いやらしいそろばん勘定をはじいているとき、知らず知らずに気迫を欠いていく。弱さが出てくる。 そんな私の弱気、いやらしさを見抜いた人が、こう言ってのけた。 「環境が変わったとき、こう問わななければならない。不器用なくせに、失敗せず、うまくやろうとしていないか。 他人の目を気にし、評価されようという厭らしさはないか。やりたいようにやって、鼻つまみ者ぐらいに思われるぐらいであれ。1,2年で追い出されるぐらいの気迫がなければいけない。 いまある環境にしがみついているようでは、だめだ。 いまの環境も、上司から評価されての結果でない、自分で好き勝手にやってきたことが外部で評価されたのが、たまたま目にとまっただけではないか。」 新しい環境に身を置いた4月、守りに入るのではなく、攻めの姿勢を持ち続けなければいけない。「うまくやろう、は馬鹿野郎。」、周囲から総すかんを受けるぐらいの気構えで、貫きたいことはあるのか。新たな環境が自分にといかけてくる。志を高く掲げていきたい。

ホモサピエンス全史

時間が出来たので手に取った一冊。 人類の歴史の転換点を、3つの革命から描いている。認知革命、農業革命、科学革命である。 「虚構」をつくること、それを空想する力をもったことが、見知らぬ人同士を強力することを可能にさせた。膨大な人間を組織することができるようになった。物語を作り、それを信じる力を手にした。認知革命である。 狩猟から農耕生活に転換することで、収穫量を計算できるようになり、人口増加につながった。しかしそれは狩猟時代よりも生活が楽になったわけではない。逆である。小麦を手に入れるため、過酷な労働を人間に強いるようになった。著者はこれを「史上最大の詐欺」とまで書いている。 個体数が増え、繁栄している種が、幸せかどうかはわからない、と著者はいう。家畜化された牛は、この世で最も惨めな種である、とまで書かれている。人間の必要のためだけに飼育され、大半はすぐに殺される。 人類の歴史について、視野が開ける本である。だが、いまの時期に読んでいると、気が重くなってくる。非常時においては、もっと軽い内容の本を読みたい、とも思う。