『AIに負けない子どもを育てる』を読んで、筆写の大切さを知る

このブログで一番読まれている記事は、筆写について私の留学時代の体験を書いたものである。http://learningshelf.net/2014/08/05/なぜ英英辞書をノートにひたすら書き写すと、英/

なぜAI全盛時代に、「筆写」の記事がよまれるのであろうか。私自身、正直いってわからなかった。

そもそも筆写は、苦痛を伴う作業だ。だから特に生徒からの反応は悪い。「めんどうだ」「なんの意味があるのか」「他の学年はやっていないのに、なんでこの学年だけ沢山英文を筆写させるのか」「単なる写経だ」等々。書かれているものを写すという行為は、まるで人気がない。

生徒だけでなく、教員からの評価も低い。アクティブラーニングが幅を利かせるなか、英文筆写用のノートを作らせて、何百も何千文も筆写させるなど、「あんなものは写経だよ、意味はない」「耐えるという力は身につくが(笑)」などと吐き捨てられるような始末である。

しかし、記事は読まれ続けている。そこになにか本質が隠されているのではないか。

こんな直観を確信に変えてくれそうな本に出合った。新井紀子『AIに負けない子供を育てる』である。

中高生の(国語)読解力が落ちている。

幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
・1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。以上の2文は同じ意味でしょうか。

この問いに対して、中学生の正答率は57パーセントにとどまったという。

中学生の中で、ドリルは満点でも文章題は白紙という生徒も増えているそうだ。

その理由は、小学校からの授業用穴埋めプリントやドリルがはやり、生徒が黒板をノートに板書しなくなったからではないか、と書かれていた。

穴埋めプリントやドリル学習を繰り返すと、キーワードを覚えることでテストの点数を取れるという、ゆがんだ成功体験が積まれる。これが教科書の文章を正確に読む力を奪っていく、というのだ。

昔ながらの教師の板書を、生徒が必死になってノートに写していく行為は、実は大変重要であるというのだ。驚きである。限られた時間で板書をノートに写す行為自体が、文を理解する機会になる。理解できない分は、何度も何度も黒板をみて画数ごとに筆写しなければならないから、効率よく筆写するためには、頭の中で理解し、何度も黒板を見なくてもよいよう、記憶しやすく理解することが促されるのであろう。

彼女はAIの専門家であるが、こうしたアナログ学習を大切にすべきだと訴える。これもびっくりである。

ここで私が生徒に課している、英文の筆写ノートの話に戻る。

これは教科書の英文を筆写するノートである。1文ごとに連番をふらせ、自分が何文書いたか、その努力を可視化できるようにしている。

定期考査ごとにノートを集めるのであるが、最低100文を書くように指導している。

生徒の評判は悪く、毎回「つらい!」という声があがる。だが、私のクラスの英語の点数は他のクラスに比べて高いのだ。私は教科書の内容についてのドリル問題や穴埋め問題は、生徒には解かせない。そんな問題をちまちま解くよりも、一文でも多く、理解した英文を音読筆写させる。これを繰り返したら、定期テストぐらい対処可能である。もっといえば、GTECや英検などのライティングにも十分対処できる。

最近はこの音読筆写ノートへの情熱が薄らいできたのだが、新井氏の本を読み、やっぱり地道な音読や筆写って、AI時代でも有効なんだな、と気づかされた。

もしあなたが中学生や高校生なら、教科書の英文をきっちり理解して、CD音声を沢山きいて音読できるようになったうえで、筆写ノートに英文を写すことをおすすめしたい。

その際、英文の構造を主語動詞、目的語と分析し、意味を理解する。CD音源で音読を繰り返す。この後、英文を写す時、サッと見たら出来るだけ多くの単語を書き写す。それも急いでかく。

このコピーイングという作業は、新井氏の書籍から考えると、地味ながらも、書く力だけでなく、読解力も鍛えるといえよう。

定期考査のためだけでなく、その先の留学や仕事で使うライティング力を鍛えるために有効である。