9 通訳案内士試験は今後難化していくのか 

 全国通訳案内士試験は、わが国唯一の語学能力を証明する国家試験である。また難関国家試験の一つと言われる。対象言語は10か国語から選択できる。試験科目は5科目で構成され、1次試験の筆記と2次試験の面接を突破しなければならない。平成30年度の合格率は9.7%(選択言語:英語)と低い。昨年度の合格率15.8%から約6%も低下した。今後は試験の難化していくのだろうか。

 端的に言えば、今後も難化傾向が続くだろう。試験が難化していく背景の一つは、一言でいうと、試験を難化させることで、通訳案内士資格の存在価値を高めたいという観光庁の意向があるのだ。

 近年、平成30年の訪日外国人は3000万人に達した。政府目標は6000万人である。ますます急増する旅行客に対応できる通訳ガイドの確保、が日本の観光行政の課題であった。その外国人旅行者への有償ガイドは、これまで免許を保有している通訳案内士のみ業務独占が許されていた。しかし有資格者は2万人程度と少なく、旅行者の需要に対して通訳案内士の供給が足りない問題が指摘されていた。

 この課題に対処すべく、平成30年度に通訳案内士法が改正された。今回の法改正で、通訳案内士の資格が、業務独占から名称独占に変更されたのだ。つまり無資格者でも、有償で通訳ガイド行為を行うことが可能となったのである。

 法改正により、事実上、通訳ガイド業への参入障壁がなくなったことで、通訳ガイド間の競争は当然激化する。極論を言えば、無資格であるが、ある程度日本文化の知識があり語学が堪能な人は、すぐにでもガイドができるのだ。しかし通訳ガイド業は訪日外国人に日本文化を伝える、「民間外交官」的な役割を期待されてもいる。ガイドから提供される情報やサービス、そして人柄が、外国人の「対日観」を作り上げる。その意味で、良質で信頼のおける通訳ガイドを供給することは、日本の国家戦略としても重要であろう。

 観光庁は規制緩和を行い、「通訳案内士資格」を業務独占から名称独占に変更させた。名称独占にすることで、通訳ガイド業の参入障壁がなくなったのだ。一方で通訳案内士には高度な知識と技能、対応を求める方針を打ち出した。まず通訳案内士試験に実務科目を追加した。また合格者へ定期研修を必修化し、品質管理の仕組みを導入している。無資格者と有資格者の差別化を図る。つまり難関資格を合格した資格所有者は、良質なガイドを提供しうるという「国家のお墨付き」を与えるのだ。今後の合格者数を絞り、資格のステータスを高めることも想定される。通訳案内士試験が今後更に難化していくことは、自然な流れといえよう。

 今年度は法改正後の初めての試験であった。訪日外国人が急増する中、今回の試験制度変更や研修制度試験合格率の大幅下落は、今後の試験が難化傾向を辿ることを物語っている。短期で効率的に試験合格を目指す方は、これまで以上に十分な準備と戦略を持って試験に臨むことが求められよう。