12 通訳案内士試験で取るべき3つの戦略 (3)

第三の戦略は、「神経科学の知見を活かして学習する」ことである。近年、神経科学の発達は目覚ましく、効率的な学習方法も生まれている。特に重要なものは、「分散学習」と「チャンク作り」だ。この戦略を、高負荷かつ効率的な学習が可能なのだ。

分散学習とは、学習した内容を忘却曲線ぎりぎりで復習し、効率的に対象を長期記憶する手法である。簡単に言うと、学んだことを忘れたころに復習し、思い出すことを繰り返す。繰り返すことで、覚えたことを忘れにくくするのだ。例えば、暗記したい用語集のカードを思い浮かべてほしい。表に用語、裏に定義が書かれている。このカード300枚を覚えたい。覚え方は、二通りある。①まず10枚の薄いカードの束で何度も覚えてそれを300枚まで30回繰り返すか。②それともいきなり300枚の分厚いカードを作り、覚えていようがいまいが、とにかく分厚いカードの束300枚で覚えるか。

一般的な感覚では、①のほうが確実な学習法に見える。しかし分散学習の考え方は、後者を採用する。分厚いカードで覚えたほうが、当然負荷は高いが、忘れにくい。記憶したものを脳が忘れたころに復習すると、記憶が強化されて忘れにくくなる。記憶する期間を十分に取れるので、知識が長期の記憶に移行しやすいため、忘れにくい。長い目でみれば、こちらのほうが効率的な学習だ。

私の実践例を説明しよう。スピーキング試験で問われそうなテーマをカードに書く。私の場合、300枚を用意した。その束をランダムに並べ替え、机の上に置く。カードのテーマを見て、瞬時に英語で説明できるかを試していく。毎回自分にテストを与えていくようなものである。当然はじめは全く説明できない。しかし苦しくても口頭で説明してみる。こうして300枚の分厚いカードをつかって、自分が記憶しているかを一気にチェックする。この作業を続けていくのだ。繰り返すと、次第に記憶しているカードが増えていく。

次にチャンク作りについて説明する。何かを学習するとは、チャンク(=意味の塊の小さな単位)を頭の中に作っていくプロセスである。例えば、英語の慣用表現(英熟語)などは、単語と単語が集まった意味の小さな単位だ。これを理解し、数十回音読して覚える。ストレスなく思い出し、会話や作文で使えるまで習熟したら、チャンクが出来たと考えるのである。小さな単位だから反復学習しやすい。このチャンク作りを、少しづつ続けていく。長文をいきなり覚えるよりも、習熟が早い。また忘れにくいのでお勧めである。

実際に私が使った方法は次の通りである。まず英文を意味ごとの塊に分け、なんども音読する。その塊を少しずつ大きくして、口頭ですらすら言えるようになるまで音読を繰り返す。こうしたすらすら口ずさめる塊=チャンクを増やして、何も見ないでもすらすら英文をそらんじることができるまで練習を繰り返す。このとき、音声の範囲指定ができるリピート機能のあるCDプレーヤーを使うと効果的である。 限られた資源を効率的に配分し、高い効果を上げるためには、「単に勉強を頑張る」だけでなく、学習する前に頭を使うことも大切だ。以上のような3つの戦略を持ち、学習を進めてみてはどうだろう。