6 国家資格「全国通訳案内士試験」は、なぜ大学生が受験すべきなのか(1)

 訪日外国人は増加の一途だ。2018年は3000万人以上の外国人が日本を訪れた。直近10年間で6倍である。外国人旅行者が増えるにつれ、英語で通訳観光ガイドを受けたいというニーズも高まっている。有償で通訳ガイドを行うためには、「全国通訳案内士試験」に合格して都道府県に登録することが原則だ。

一方、2018年の通訳案内士法改正で、規制緩和され、無資格者でも金銭を受けって通訳ガイドすることが認められた。しかし訪日外国人側から見れば、「国家資格取得者」からサービスを受けたいという希望は強い。またガイドを採用する旅行会社の大多数も、資格所有者であることを採用の最低条件としている。資格の価値を高め、無資格者と有資格者の差別化を図ろうとする観光庁の意向もあり、今後も全国通訳案内士の資格は、能力・品質を証明するブラント的な意味を増していくだろう。

 全国通訳案内士試験は、受験資格が不問であり誰にでも門戸が開かれている。受験者のボリュームゾーンは50代(30.5%)だ。一方で20代は7.1%、10代に至っては0.3%である(平成28年度)。人生経験を積んだ人が受験する傾向を示している。けれども試験構成や社会背景を考えると、全国通訳案内士は大学生こそ受験すべき試験である。理由は(1)学歴に関係なく自身を差別化でき、キャリアデベロップメントの点で競争優位となる (2)高校・大学の学びを生かせる、限界費用の低い試験 (3)日本人である強みを最大限に生かせる資格 という3点に集約される。

 第一に、全国通訳案内士資格を取得することは、自分自身を差別化でき、キャリアの可能性を大きく広げることが出来る。そもそも通訳案内士試験は、高度な語学力と日本事象の専門知識の有無を問う試験を、掛け合わせたものだ。試験自体がユニークで他に類を見ない。そしてこの資格は語学系で唯一の国家資格であり、公的な身分と能力を証明する武器ともなる。自分の知識と技能を示すため、名刺にも資格を記載することが出来る。資格を取得すると、他人と差別化され、公的な身分証明も手に入る面白さがある。有名大学出身でなくとも、語学と専門知識に秀でていることを履歴書に刻めるのだ。

また他の語学試験に比べ、合格者数が少なく希少価値がある。平成30年度の合格者(英語)はわずか753人である。一方で、案内士試験と同程度の難易度と言われる英検1級は、年間合格者数は2500人程度である。またTOEIC895点以上の年間取得者は、30,000人程度と更に増える。

資格取得後、通訳ガイドの独立事業者として活動することも可能だ。まず都道府県に登録申請が必要である。一般的に、語学資格だけで独立することは厳しい。しかし通訳案内士の資格は、語学プラス観光関連の専門知識を証明する。だから力さえあれば独立事業者として、観光業界で即戦力として働けるのだ。

専門知識を生かして社会貢献もできる。全国通訳案内士として、訪日外国人向けの観光や道案内ボランティアなどを行うことも可能だ。人生100年時代に、仕事と家庭以外の「第三のコミュニティ」を作ることは、豊かな人生を送るうえで不可欠だ。通訳案内士という専門性を武器に、ボランティアすることは、お金には代えられない喜びや充実感を感じられよう。