「あなたの授業に一番かけているものは、芝居っ気だよ」

私の授業をみた師匠はいう。ではなぜ演じなくてはならないのか。淡々と冷静になって授業してはダメなのか。

「こんなこと誰も言わないからいうけどね、ほんとは、生徒は優しく騙されたいの。つまらない勉強も、先生にうまく導いてほしいと思ってる。彼らは心のどこかで、やる気にさせてほしいの。」

そんなものですか、と答える。こんなこと、聞いたことない。

「人を騙せなければ、いい教師にはなれないよ。」

ハッとさせられた。

教師はものを教えるのが仕事だ。でもそもそもやる気のない人には、教えることはできない。まず学ぼうというレディネスを高めるのが必要なのだ。

そのためには、あらゆるリソースを使って生徒をやる気にさせなければならない。「優しく騙されたい」という心理があるなら、教師は芝居っ気を出し、学びたいという意欲を刺激した方が良いのだ。

これを意識して、生徒の表情が重いなと感じると、授業開始時に一芝居を打つようになった。

世界が我々の英語教育に注目している!と、この学校の先取的な英語学習の素晴らしさを、問いかけながら熱く語りかける。

生徒は「またかよ」と失笑しながらも、聞いている。

しばらく経つと、周囲の同僚から「先生、モチベーションない生徒の前で、今日も授業頑張ろうって、熱く語ってるらしいですね」と言われる。

生徒は教師をよくみているものだ。芝居がかっているのも理解する。それで目の前の人がちょっとでもやる気になってくれればいいのだと思う。