成熟国家としての英国に、日本が学ぶべき理由

これまでのような成長が見込めない、日本。
英国留学で、今の日本は、成熟社会を経験している英国に学ぶべきことが多いと気づきました。

そもそも、英国に来た当初はこの国が嫌いでした。

事務処理は不正確で遅い、みな自分の仕事はしたがらず他人に振る、店は5時ごろで閉まる。

製品はすぐに壊れる、水回りは弱い、階級社会でそれぞれの人が差別意識を持っている・・・などなど。

日本の丁寧で素早いサービスに慣れていた私には、この国がとても先進国とは思えなかったのです。

しかし、最近意識的にさまざまな人やコミュニティーに入り込んでいくと、徐々にこの国の人の価値観が透けて見えてきました。

感じるのは、この国には日本のような「Social pressure」が少ないという点です。

日本は性別、世代ごとに「こうあるべき」という価値観があり、それをもつこと自分にも他人にも当たり前のように期待しています。

たとえば就職、結婚、家族、友人関係・・・ 

そういった「あるべき価値観」が、社会の急激な変化で陳腐化しているのに、将来を照らす明るい「価値観」を見いだせないため、社会全体が閉塞感で包まれている。

日本をいったん出てみると、そう感じます。

イギリスはどうでしょう。 イギリスも不況の真っただ中、公共事業のカットが続いて昨年第四四半期だけで4万9千人の失業者が増えました。

ネガティブな空気はあるのですが、それは日本とは全く異なったものです。

ある種、「大人のあきらめの空気」が流れているのです。

卑近な例をあげたいと思います。

私の知り合いにケンブリッジ大学卒の優秀なイギリス人がいるのですが、彼は出世やお金などのために長時間ハードワークする選択はせず、のんびりと自分の好きな仕事についている。決して人からうらやましがられない職です。

私からみれば、優秀な頭脳が生かされない、社会の損失のように見えました。

日本であれば、「東大まで出て何をしているんだ」という社会の無言の圧力があるはずです。

彼に「イギリスでは成功、仕事を懸命にする、というsocial pressureはないのか?」と尋ねたところ、つぎのような解答がありました。

「イギリスは第二次大戦で戦勝国となった。

しかし、債務国となり経済は傾き、大英帝国から次々と植民地は独立した。

ヨーロッパがドイツに席巻されたなか、唯一独立を保ったのはイギリスだけだった。

人々は懸命に闘い、戦争に勝った。

しかし、その後にやってきたのは不況、国運は傾いた。

そんな状況がもう60年続いている。

この戦後の不況、経済の苦闘が、イギリス人のメンタリティを変えたのだ。

必死で頑張った結果がこれなんだ!と。

それでイギリスでのsocial pressureはかつてほど強くはなくなった。

成功することは大切だが、みなが成功できないことを、イギリス人全体が経験してしまったからだ」

私は彼の言葉に、イギリスの緩やかに衰退していくかつての大英帝国の影を見るとともに、この国にはさまざまな価値観を許容する懐の深さが存在する、と感じました。

そして、そんなイギリスに将来の日本の姿を重ねてしまいました。

失われた10年、20年のあと、世界第二位の経済大国の地位から滑りおち、閉塞感に包まれる日本。

高度経済成長の成功体験を味わった団塊の世代、そして頑張っても報われないという徒労感を抱き始めた若い世代。

最近は就活に失敗した学生が自殺する、という痛ましいニュースも増えています。

しかし「みなといっしょに内定をもらわなければならない」「就職しないと負け組」、

という狭い価値観だけで世の中を見ず、世界のさまざまな考え方に触れて頂きたいのです。

成熟社会とは、多様性を認める懐の深い社会でもある。
イギリス留学で私が感じた結論であり、私自身も自分の人生は『周囲がなんとなくそうしているから」といったことではなく、自分の意思で決め、自分で切り開く、という強い想いを持ち続けたいと思っています。

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